いろいろな名前
正式には、どういう名前なのかよくわからないが、 「気をつけ・礼・直れ」の音楽について取り上げてみる。 ザッと調べてみた限りでも、地域によってなのか、 「一同礼」「修礼」などなど、いろいろな名前で呼ばれているようだ。 個人的には「ジャーン、ジャーン、ジャーン」の音楽、 と口に出して言いたくなってしまうが、 「気をつけ・礼・直れ」の時に使う伴奏なので、 本記事のタイトルは、「気をつけ・礼・直れ」の音楽、としてみた。 他にも、少々古い本で恐縮だが、 実践コード・ワーク理論編 では、「起立!」→「礼!」→「着席!」の時の伴奏として例示されており、 そのときのコード進行は「C→G7→C」だとしている。
C→G7→C
同じコード進行でも、弾き方はいくつも考えられる。 本に掲載されている譜例はともかくとして、「C→G7→C」であれば、 個人的には譜例1のように弾きたくなる。
以前放送されていたていたヤマハ音楽教室のCMでは、「ドミソ、シファソ、ドミソ」 のように歌っていた。 この場合であれば、譜例2のようになるだろう。
C→G→C
ここで、とある先生が、最初と最後の和音(気をつけと直れの和音)が 「ミソド」で、真ん中の和音(礼の和音)が「レソシ」か「レファシ」 みたいな弾き方をしたらしい、という話を聞いたのだ。 真ん中の和音が「レソシ」だとすると譜例3のようになり、 コード進行は「C→G→C」ということになる。
個人的にはハ長調であれば和音は C, F, G7 の三種類が 基本だと思っていた。さらには先ほどの本の影響もあっただろう、 ずっと、「C→G7→C」のように、真ん中はG7だと思っていた。 しかし、譜例3は「C→G→C」であって、 真ん中はGになる。 これには、ちょっと違和感を覚えたものの、 ハ長調の和音として G を使ってはいけないわけではないので、 間違いとは言い切れない。聴いてみても変ではない。 そこで、少々調べてみたところ、譜例3のように弾く流儀も、 少なからずあるらしく、「C→G→C」も、それなりに一般的、ということがわかった。 また、ハ長調の和音もG7ではなく、Gを基本と考える向きもあるようだ。
G7
一方、とある先生が弾いたという話は、かなりあいまいで、 真ん中の和音は「レファシ」だったかもしれない、というものだった。 「レファシ」は、素直に考えれば、転回すると 「シレファ」つまり Bm-5 ということになる。 ハ長調のコードではあるので、使えないわけではないが、 あまり登場するものではない。とは思ったものの、 よく考えてみれば、本来の G7 「ソシレファ」は 「ソ+シレファ」という構造になっていて Bm-5 を含んでいる。 譜例1の G7 は「ソシファ」になっていて、 「レ」が省略されているのだ。 「レ」を省略せずに「ソ」を省略したって G7 だ、 と言う事もできる。(一応、「シ」を省略してしまうと、 G7 か Gm7 か区別がつかなくなるし、 「ファ」を省略してしまうと G になってしまい、 G7の7たるゆえんが消えてしまうので、省略できない。) それに、ベースで「ソ」を弾いてやれば省略なしの G7 だ。 というわけでできたのが譜例4である。
アルペジオ
ここまで譜例に示してきたものは、コードや構成音は異なるものの、 すべて全音符が3小節続くという構造になっており、 聴いた感じも似たようなものだろう。 もちろん、「気をつけ・礼・直れ」の音楽である限り、 同じように聴こえなければ意味がない。 しかし、ここから先はお遊びで、少々崩してみよう。 以前、高校のとき、音楽科の教諭が、生徒の気を引くためだろうか、 アルペジオ(分散和音)を使って「気をつけ・礼・直れ」を 弾いて見せたことがあった。 どのように弾いたのか正確なところは忘れてしまったが、 イメージ的には譜例5のようなものである。
これでも十分に無駄にハデさが出ていると思うが、 さらにさらに、きらびやかにしてみようとヒネってみたのが、 譜例6である。
各和音の左側に縦にギザギザの線が入っているが、 これもアルペジオといって、実際には譜例7のように弾く。
どうだろうか。もはや原型をとどめていないというか、 ここまで来るともう何の音楽だったのか分からなくなってしまっていて、 それはそれで面白いのではないだろうか。
参考
本記事で使用した楽譜は lilypond というツールを使って作成した。 楽譜のソースファイルもご覧いただけるようにしている。 標準MIDIファイルもlilypondで 出力したものである。
なお、lilypondでは、 譜例6のソースを処理しても、 標準MIDIファイルでは縦ギザギザ線のアルペジオが再現されなかった。 そこで、譜例6の「聴いてみる」リンク先は、 譜例7のソースを処理して得られた 標準MIDIファイルにしてある。